本のガイドブログ~貴方の気分に添える本をご紹介~

年間数百冊×年齢(アラフィフ・・・)を読破してきた不二ちゃんことワタクシが楽しい気分、泣きたい気分、感動したい気分、家族愛な気分などそれぞれに合った気分の本を独断でご紹介いたします。

なりたい気分になれるおススメな本をご紹介します!

感動?ハラハラ?どんな本をお探しですか?

映画やドラマを見て感動したり、ハラハラしたりするのも良いですが、
本は自分の頭の中のスクリーンを作り出せるので、
自分が主人公になるのも良し、お気に入りの俳優を想像して読むのも良しの
自分だけの映像が作り出せる素晴らしい世界です。

でも無尽蔵にある本の中から自分が読みたい気分の本を探し出すのは
とても大変な作業です。


(ワタクシの場合、暇さえあれば大型書店に繰り出して1日中本探しに明け暮れています)

そんな読破数だけは誇れるワタクシが、不肖ながらみなさまの読みたい気分の本に
出合えるお手伝いをさせていただきたいと思います。

ぜひぜひご参考にしてくださいませ

目次

感動したいときに読む本

感動!読み終わった後に充実感となんとも言えないすっきりした気分を味わえ
感慨に浸れる本です。

百田尚樹「永遠のゼロ」
小川洋子「博士の愛した数式」
横山秀夫「半落ち」
リリーフランキー「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」
遠藤周作「おバカさん」

とにかく泣きたい気分におすすめな本

外で読むのは要注意!読んでいて涙が止まらなくなる本です。

三浦綾子「塩狩峠」
坂牧俊子「純からの贈り物」
浅田次郎「うらぼんえ」
浅田次郎「壬生義士伝」
榎田ユウリ「メッセージ」

ハラハラ、ドキドキしたいときにおすすめな本

ミステリーあり、サスペンスあり、怖いのありの
色んなドキドキハラハラが味わえる本です。

高野和明「ジェノサイド」
高村薫「李歐」
桐野夏生「OUT」
近藤史恵サクリファイス
道尾秀介カラスの親指

読むのが辛い!でも読んでしまう本

読んでて辛い!読むのやめようか…と思うけれど、
止められずに読み進めてしまう本。

天童荒太永遠の仔
三浦綾子「氷点」
宮部みゆき模倣犯
湊かなえ「告白」
浅田次郎日輪の遺産

続きが待ちきれない!な本

一冊では終わらない!大人買いしてでも読みたい本です。

上橋菜穂子「鹿の王」
宮部みゆき「ソロモンの偽証」
五條瑛「プラチナ・ビーズ」シリーズ

爽やかな感動に浸れる本

青春っていいな~と爽やかな感動に浸れます。
漫画を読んでいるように楽しい話です。

恩田陸蜜蜂と遠雷
畠中恵アイスクリン強し」
知念実希人「崩れる脳を抱きしめて」

読むのが止まらない!寝るのも忘れて読んでしまう本

結末が気になって読むのが止まらない!
寝不足になる本です。

柚月裕子「盤上の向日葵」
森見登美彦「熱帯」



次記事から上記の本の紹介を一冊づつ紹介させていただきます。
ご興味ある方はお進みくださいね。

また思いついたらちょくちょく追加でご紹介も致します!

永遠のゼロ~真の強さに号泣します~

百田百樹「永遠のゼロ」は愛を貫く真の男の強さに号泣

岡田准一さんの主演で映画化もされた作品。

あらすじ

弁護士を目指す大学生・健太郎は祖母・松乃の四十九日で祖父・賢一郎から自分が本当の祖父でないことを告白される。祖父は第二次世界大戦で夫を失った松乃・清子親子と戦後に再婚していたのだ。

その告白から6年後、司法試験に何度も落ち、自堕落な生活をしていた健太郎フリーライターの姉・慶子に新聞社主宰の「戦後60周年記念プロジェクト」のアシスタントを頼まれ、しぶしぶだが特攻隊で亡くなったとされる実の祖父・宮部久蔵のことを調べることになる。

二人は生前久蔵と海軍航空隊で一緒で存命している9名と面会し、祖父の人となりを調べていくが、
「海軍航空隊一の臆病者」「生きたがりの卑怯者」
と罵るものもいれば
「何よりも勇気がある人」「海軍航空隊一の凄腕操縦士」
と感謝し、称えるものもいた。

母清子にも久蔵の本当の人物像を知りたいとお願いされ、次々と久蔵について調べていくうちに衝撃の事実が明らかになっていく・・・。

国のために命を捧げるのを当然とされた戦時期に、生きるということに執念を燃やしたのは愛する妻と生まれてくる子供を守るためであったが、そんな生にしがみついていた久蔵がなぜ最期は志願して特攻機に乗り込んだのか?

その謎に迫っていくうちに健太郎は真の久蔵の静かなる強さに気づいていくのであった。

読後感想

もうとにかく号泣します。

家族を守ることを約束し、死んでも尚その約束を守り続ける久蔵。
姿かたちがなくなっても松乃・清子を守り続けていきます。
どういう方法で守っていくのか?気になりますよね?とにかく感動します!

腕っぷしの強さとかではなく、人に何と言われようとも真の愛を貫く、自分を曲げない久蔵の姿に、真の強さとはこういうものなのだと考えさせられます。

また、あれだけ生にしがみついていた久蔵がなぜ最期に自分から死を志願したのか?の謎解きもあり、とにかく秀逸な作品。

最後に驚きの真実も明かされますよ!

注:ハンカチを2枚ほど用意して、家にてお読みください。外で読むと泣きすぎて人に不審がられます!

博士の愛した数式 ~疑似家族にあふれる静かな愛に涙~

小川洋子博士の愛した数式」は静謐な人間愛に涙します


寺尾聡さん、深津絵里さん主演で映画化もされました。

あらすじ

主人公の博士は80分しか記憶が持たない前向性健忘’という病気に侵されていますが、
その特殊性とは別に、淡々と静かにシングルマザーである私とその息子『ルート』との
疑似家族にも似た愛情に満ち溢れた日々が描かれていきます。

高校生の時に大学生の相手との子供を妊娠して束縛する母から逃亡するように家出し、
シングルマザーとなった私は、家政婦紹介所で他の家政婦が長続きしない、
問題ありの数学の教授の家を紹介されます。

博士は事故により80分しか記憶が持てないという障害を抱えていますが、
事故前の記憶は存在しているため、こよなく数字を愛していた人格は残っています。

ある日、私が小学生の息子を家に残していることを知った博士は
明日から息子も一緒に連れてくるようにと伝えます。
子供は一人にしてはいけないという、博士の子供に対する愛情の表われでした。

次の日、博士の家に一緒に赴いた息子に博士は「ルート」という呼び名を付けます。
頭の形が数学記号の√に似ているからです。

その日から会うたびに初対面の挨拶をする三人ですが、父親のいない私親子と
博士との本物の家族とは少し違うけれど、静謐な愛があふれる交流が始まります。

博士は数字に対して特別な執着があり、その思考を中断されることはとても嫌がりますが、
ルートだけは別で、ルートに数学を教えたり、博士の大好きな野球の話をしたりして
温かな日々が過ぎていきます。そしてそれは博士の亡くなる日まで続くのでした。

読後感想

交流の中に様々な数式や数字の仕組みなどが語られていて、
作家ってすごいな~と変な感心を思わずしてしまいます(笑)

博士にも私にもいろいろな問題は起こりますが、特別大事件があるというわけでなく
静かな日常が私の視点て淡々と綴られていく愛情あふれる物語です。

父親のいないルートが、博士の中に父親像を見て(実際は祖父くらいなんですが)
博士に大きな愛を与えられて育ち、博士が亡くなるころに数学教師になるところなど
胸を打つ感動があります。

博士と私には男女の愛などは全くなく(博士は義姉を愛していました)
純粋に人間愛が描かれた物語ですが、
こういった愛情もあるんだなあ、と深い感慨を受けました。

読み終わった後に、思わずほわ~っと温かい気持ちになれる
そんな優しさにあふれた物語です。

博士が話す数式も勉強になりますよ(?)

例えば私と博士は友愛数で結ばれていると博士は言うのですが、
それはどういうことかというと
私の誕生日2月20日「220」と
博士の大切な時計の裏に刻まれた番号「284」は
220の約数が{1.2.4.5.10.11.20.22.44.55.110}で合計すると284
284の約数が{1.2.4.71.142}で合計すると220
となるから友愛数だと説明します。

日常生活に数学を持ち込まない私(不二ちゃんです)などは
それを生活の一部にして私(主人公)親子とのコミュニケーションの
手段とすることにも今までにない小説だと興味深かったです。

ちょっと変わった素敵な物語です。

半落ち~家族を失った男の愛に涙~

横山秀夫半落ち」は真実を語ることがない男の愛に涙。

たまたまですが、こちらも寺尾聡さん主演で映画化されました。

あらすじ

元警察官の主人公・梶が2日前に妻を殺したと、自首したところから物語は始まります。

梶は愛する妻がアルツハイマー病にかかり、
「自分がまともなうちに殺してくれ」という願いをかなえるため
妻を殺してしまったのです。

元警察官の自首ということで、すぐに真相はすべて自供される所謂「完落ち」になると、
当初は踏んでいましたが、
妻を殺してから自首するまでの"空白の2日間”について彼は絶対に語らず、
所謂半落ちのまま。

家宅捜査の折に「人間50年」という不思議なメモを発見します。

警察官の志木はじっくり聞きだせばよいと考えていましたが、
空白の2日間に梶が悪いイメージのある歌舞伎町に言っていたことが判明し、
警察の体面を保つために、梶に偽の供述をさせ、事件は検察に回されます。

担当となった検察官の佐瀬は、警察の供述にねつ造があることを見抜き
県警に無許可で家事の自宅を捜査しますが肝心な物証はすべて県警に持ち去られていました。

そんな折、横領の疑いで検察内で内偵を受けていた検察官の男が
置き引きで県警に逮捕されてしまいます。
検察官が県警に逮捕されるなんてあってはならないこと。

検察は梶の事件から身を引く代わりに、検察官の男が検察官内部の捜査によって
逮捕されたようにするよう取引し、梶の事件は闇に葬られました。

そんな折、偶然にも佐瀬と検察官の口論を聞いてしまった
新聞記者の中尾は新聞記者として名を上げるために
梶事件の"空白の2日間”と"ねつ造された供述書”について調べ初め、
大スクープをつかみますが、警察・検察の隠ぺいにあい、
あっけなく立ち消えになってしまいました。

そのまま裁判まで進んでしまった事件ですが、
佐瀬の同級生である弁護士の植松が人権派弁護士として名声を得るために
梶の弁護を買って出ます。
植松は梶の義姉から梶が空白の2日間に歌舞伎町に言ったことを聞き出しますが、
肝心の梶が否定したため、裁判に不利になると思い
裁判でも真実が明らかになることはありませんでした。

裁判は自身の父もアルツハイマーだったという藤林が担当することとなり、
父も梶の妻のように「自分がまともなうちに殺してくれ」と
言っていたことを知り、懲役4年という軽い刑を言い渡す。

時は流れ、事件が忘れ去られようとしていたころ定年間近の刑務官古賀は
変わった受刑者の梶の処遇に困っていましたが、
彼のもとに志木から度々連絡が入るようになり、とうとう空白の2日間の
事実を知ることになったのでした。


彼の黙秘していた2日間は歌舞伎町に彼の骨髄ドナーである青年に会いに
行っていたのです。
梶は息子を白血病で失っていた過去から、骨髄バンクに登録し
青年に移植していた過去があったのです。

黙秘していたのは、自分の中に流れる血が犯罪者と知って
青年が苦しむのを恐れたから。

そしてどんな事情であれ、妻を殺したのに後を追って自殺しなかったのは
50歳までは骨髄を移植できるため、
誰かに移植できる可能性があるまでは死なないという彼なりの決心のためでした。

読後感想

作者である横山秀夫さん自身が息子さんが骨髄移植を受け元気になったという
経験を持つため、その体験を小説にしたこのお話。

殺人は絶対にいけないけれども、亡くなった息子を覚えているうちに
殺してほしいという妻を愛おしく思う故に手にかけてしまった男の愛。

また移植した青年を亡くなった息子に重ね、見守る男の愛。

自分たちの体面ばかり考えて、真実が表に出なかった組織と
自分のことはさておき、自分の大切にしているものを守り抜く梶との
正反対の比較により、梶の大きな人間愛が浮き立った考えさせられる小説でした。

妻を殺した年が51歳だったら迷わず自殺してしまったんだろうな。

愛する家族を失った男の哀しい愛の物語でした。

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン~見返りを求めない母の無償の愛に涙~

リリーフランキー「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」


カンヌ映画祭で金賞を取った「万引き家族」に主演、今や役者としても活躍している
リリーフランキーさんの自伝小説です。

2005年に本屋大賞もとり何度も映像化された作品。

映画は母親役を演じた樹木希林さんの印象が鮮明に残っています。


あらすじ

主人公のボクは九州の小倉で生まれましたが、4歳の時に両親が別居(離婚ではない)
オカンに連れられて築豊にあるオカンの実家に身を寄せることとなります。

夏休みなどはオトンとも会ってたりして、中学生の時に一度オトンと住むという話も
持ち上がりますが、結局立ち消えとなりました。

ボクは高校に進学する際には、若者特有の「ここではなくどこかへ行きたい」
と思う気持ちと
「オカンを解放してあげたい」という気持ちから
大分県別府市の美術高校をえらびました。

1人暮らしを始めたボクに進学や生活費など、色々とお金を出してくれるオカンに
内心は悪いと思いながらも、だらだらとした学生時代を過ごします。

高校卒業後の将来について、夢も希望も何もないボクですが、
オトンにこれだけは決まっていると宣言します。
オトンが「おう、なんか?言うてみい」と尋ねると
「東京へ行きたい」
と答えるのでした。

オトンにもっと色んなやつを見てこい、という後押しをもらい
東京へ出てきたボクは大学生活もダラダラとオカンの脛をかじって過ごし、
卒業後も就職せず、フリーのイラストライターとなります。

仕事もあまりなく、本当に貧乏なボクはガス、水道を止められ、
ついには家も追い出されますが、友人たちには恵まれます。

そんなこんなですこしづつ仕事も軌道に乗ってくるのですが、
そんな折にオカンに病気が見つかります。

そして僕は言うのです。
「東京で、一緒に住もうか?」

そうして二人は東京で一緒に住むことになるのでした。


読後感想

とにかくボクもオトンもオカンの脛をかじりすぎなんです。
(オカンひざ下なくなっちゃうんじゃないの?と思えるほどに(笑))

でもそんなボクに無償の愛・献身的な愛を注ぎ続けるオカンが
読んでいて辛かったのですが(当時独身)、
母となった今はオカンの気持ちが痛いほどわかります(笑)

「オカンの人生は十八のボクから見ても、小さく見えてしまう。
それは、ボクに人生を切り分けてくれたからなのだ」

ボクとオカンの関係を象徴する印象的な言葉です。
ボクも不器用なんですが、オカンを心から愛しているんです。

オカンが亡くなった後、オカンが唯一死ぬまで手放さなかった大事なもの、
“ぬか漬け”をオトンと二人で食べるシーンは
二人の不器用な愛が感じられとても心に残る場面でした。
(今でもぬか漬けを食べていると「東京タワー」のこの場面を思い出します。)

題名となった「東京タワー」とはまさしく東京の象徴的なもので、
その東京タワーを軸に時代は駒のようにくるくる回るという事を
リリーさんは表しているのだと思います。

オカンの人生もボクの人生も流れのままにくるくる回ると・・・。

読み終わって痛烈に感じた正直な気持ち。

男は強烈なマザコンなのだ!

おバカさん~どこまでもおバカさんな男の大きな愛に涙~

遠藤周作「おバカさん」


私が中学生の頃(かれこれ30年以上前・・・)に初めて遠藤周作さんの
小説を手に取ったのがこの「おバカさん」です。

題名からは想像できないシビアな物語です。


あらすじ


時代は戦後くらい。東京にある兄妹が住んでいます。
兄はのんびりとした日垣隆盛、妹は6歳下のしっかりものの巴絵で、
ある日兄がペンフレンドのフランス人が来日して
この家に居候すると言い出します。

しかもそのフランス人。ナポレオンの末裔だというのです。

少し期待する巴絵でしたが、現れたのは顔の長い馬面で愚鈍そうな
ガストン・ボナパルトという名の男。

日本語も片言しか話せず、純粋無垢なガストンは
あちこちで騒動を起こし兄妹を呆れさせますが
どこか憎めない男です。

ガストンはそのうち兄妹のもとを去り、
遠藤というやくざの男と知り合います。

遠藤は大学を卒業したインテリヤクザで、
やくざになったのは尊敬していた兄の仇・金井を殺すためでした。

愚直で純粋、人をとことん信じるガストンは復讐をさせまいと
遠藤を案じどこまでもついていきます。
時に蹴られ、殴られてもヘラヘラ笑って、野良犬・ナポレオンとともに。

カストンは言います。

「エンドさんひとりぽっちだからトモダチいりますね。これ私の信念。
アナタについていくこと。アナタみすてないこと。

金井殺害の絶好のチャンスをガストンに邪魔され(ガストンいつのまにか
遠藤の拳銃の弾を抜いてしまいます。その素早さ、本当はなにもの!?ってなります)
「みすてない」と憐れんでいるように言われたと感じた遠藤は激怒し
東北に飛んで行ってしまいますが、
それでもガストンはどこまでも遠藤を探し出します。

もう一人の敵、小林殺害をもくろむ遠藤ですが、返り討ちに合い
ガストンが救いますが、ガストンも深手を負い
どこかへ姿をくらますのでした。


読後感想

読んでいくとガストンは”バカ”ではなく”おバカさん”だと気づきます。
とことん人を信じるおバカさん。

作者が親交があったジョルジュ・ネラン神父をモデルに書いたそうです。

まさしくガストンは弟子に裏切られながらも信じ続けた
現代のエスキリストだと思います。

遠藤周作と言えば「深い河」や「沈黙」が有名ですが、
そこに流れる共通の信念はキリスト教です。

この話もキリストが言ったといわれる
「右の頬を殴られたら、左の頬も出せ」
といったキリストの犠牲愛が根本にあります。

殴られても蹴られても裏切られても、注ぎ続ける献身的な愛。

そんな男をバカと言えるのでしょうか?

きれいごとではなかなかできない大きな愛に感服し、
深い感動を覚えたのを思い出します。


私事ですが、ワタクシ大学のゼミで遠藤周作を専攻していました。
(ゼミの教授と知り合いで、遠藤周作さんの講義を受けることもできました)

「沈黙」「深い河」「海と毒薬」など救いのないような
重いテーマを書いている先生と思えないほどユーモアたっぷりな先生で
著名な方が亡くなったとニュースで知って涙したのは
後にも先にも遠藤周作さんでした。それほど未だに尊敬してやまない作家さんです。

ぜひ、本当の無償の愛を感じてみてください。

塩狩峠~信仰に殉じた男の自己犠牲に胸を打たれる~

三浦綾子塩狩峠

高校生の時に読んだ本。

実際に起きた事件の実話をもとにしています。

私自身もキリスト教の学校に通っていたので、ここまで信仰を極める主人公に
感銘を受けたことを思い出します。

あらすじ

明治時代。
東京の本郷に生まれた永野信夫は母は死んだと聞かされて、
祖母と父と暮らしていました。

祖母の死後、実は母が生きていることを知らされ、
更に父ともまだ会っているばかりか妹も生まれていることを知り、
小学生の信夫はショックを受けます。

母はキリスト教を信仰していて、大のヤソ(キリスト教)嫌いであった
祖母に追い出されていたのです。

祖母の死後は親子4人で暮らし始めますが、
自分を捨ててまでキリスト教を信仰する母になじめず、
キリスト教を受け入れることが出来ません。


そのころ、一生の友となる心優しい吉川修と出会うが
修は夜逃げ同然で北海道へ行ってしまうが、文通をして親交を深めます。

旧制中学を卒業数年後に修を再開した信夫は修の勧めもあって
北海道の札幌に移住し炭鉱鉄道会社に就職します。

そのあと、旭川へ転勤した信夫は、父母、修の妹のふじ子の影響で
ついにキリスト教の信者になります。

やがて足も悪く、結核を患っているにもかかわらず、
明るく前向きに生きるふじ子んい惹かれ初め
二人は婚約することになりました。

結納の日。
札幌へ向かう列車が塩狩峠の頂上へさしかかろうとしたとき、
信夫が乗る最後尾の車両の連結部が外れ、車両は塩狩峠を逆走してしまいます。

このままでは乗客全員が死んでしまうと感じた信夫は
自ら線路に飛び込んで列車の下敷きとなり乗客を救うのでした。


読後感想

キリスト教を扱う文学は
必ず信仰のもとにこういった自己犠牲が出てくるので、
キリスト教とは何ぞや?とかなり深く考えさせられました。

自己犠牲って崇高なものではあるけれど、
残された家族にとってはたまらないですよね。

同じ時期に学校でアウシュビッツで他の人の身代わりになって死んだ
コルベ神父様の映画も見させられたり、
磔にあいながらも信仰を捨てなかった26聖人の話を聞いたり、
基本、自分が可愛い人間をどうしてこの信仰は
自己犠牲に変えられるのか?と
キリスト教がとても不気味なものに見えたこともありました。


この物語の中にも三堀という男が出てきて、
所詮キリスト教とはキレイ事だけの説教じみた宗教だと
信夫に言い放ちます。

しかし、幸せな未来が待っている結納へ向かう道で
列車の下に身をなげうった信夫を見て
真の信仰の意味を知り、のちにキリスト教を信仰します。

こんな聖書の一説が出てきます。

兄妹よ、世は汝らを憎むとも怪しむな。われら兄弟を愛するによりて・・・

一粒の麦、地に落ちて死なずは、唯一つにて在らん。

本当の愛とは何なのか?
本当の自分の信念とは何なのか?

信夫に教えられ、慟哭する物語です。