本のガイドブログ~貴方の気分に添える本をご紹介~

年間数百冊×年齢(アラフィフ・・・)を読破してきた不二ちゃんことワタクシが楽しい気分、泣きたい気分、感動したい気分、家族愛な気分などそれぞれに合った気分の本を独断でご紹介いたします。

塩狩峠~信仰に殉じた男の自己犠牲に胸を打たれる~

三浦綾子塩狩峠

高校生の時に読んだ本。

実際に起きた事件の実話をもとにしています。

私自身もキリスト教の学校に通っていたので、ここまで信仰を極める主人公に
感銘を受けたことを思い出します。

あらすじ

明治時代。
東京の本郷に生まれた永野信夫は母は死んだと聞かされて、
祖母と父と暮らしていました。

祖母の死後、実は母が生きていることを知らされ、
更に父ともまだ会っているばかりか妹も生まれていることを知り、
小学生の信夫はショックを受けます。

母はキリスト教を信仰していて、大のヤソ(キリスト教)嫌いであった
祖母に追い出されていたのです。

祖母の死後は親子4人で暮らし始めますが、
自分を捨ててまでキリスト教を信仰する母になじめず、
キリスト教を受け入れることが出来ません。


そのころ、一生の友となる心優しい吉川修と出会うが
修は夜逃げ同然で北海道へ行ってしまうが、文通をして親交を深めます。

旧制中学を卒業数年後に修を再開した信夫は修の勧めもあって
北海道の札幌に移住し炭鉱鉄道会社に就職します。

そのあと、旭川へ転勤した信夫は、父母、修の妹のふじ子の影響で
ついにキリスト教の信者になります。

やがて足も悪く、結核を患っているにもかかわらず、
明るく前向きに生きるふじ子んい惹かれ初め
二人は婚約することになりました。

結納の日。
札幌へ向かう列車が塩狩峠の頂上へさしかかろうとしたとき、
信夫が乗る最後尾の車両の連結部が外れ、車両は塩狩峠を逆走してしまいます。

このままでは乗客全員が死んでしまうと感じた信夫は
自ら線路に飛び込んで列車の下敷きとなり乗客を救うのでした。


読後感想

キリスト教を扱う文学は
必ず信仰のもとにこういった自己犠牲が出てくるので、
キリスト教とは何ぞや?とかなり深く考えさせられました。

自己犠牲って崇高なものではあるけれど、
残された家族にとってはたまらないですよね。

同じ時期に学校でアウシュビッツで他の人の身代わりになって死んだ
コルベ神父様の映画も見させられたり、
磔にあいながらも信仰を捨てなかった26聖人の話を聞いたり、
基本、自分が可愛い人間をどうしてこの信仰は
自己犠牲に変えられるのか?と
キリスト教がとても不気味なものに見えたこともありました。


この物語の中にも三堀という男が出てきて、
所詮キリスト教とはキレイ事だけの説教じみた宗教だと
信夫に言い放ちます。

しかし、幸せな未来が待っている結納へ向かう道で
列車の下に身をなげうった信夫を見て
真の信仰の意味を知り、のちにキリスト教を信仰します。

こんな聖書の一説が出てきます。

兄妹よ、世は汝らを憎むとも怪しむな。われら兄弟を愛するによりて・・・

一粒の麦、地に落ちて死なずは、唯一つにて在らん。

本当の愛とは何なのか?
本当の自分の信念とは何なのか?

信夫に教えられ、慟哭する物語です。