本のガイドブログ~貴方の気分に添える本をご紹介~

年間数百冊×年齢(アラフィフ・・・)を読破してきた不二ちゃんことワタクシが楽しい気分、泣きたい気分、感動したい気分、家族愛な気分などそれぞれに合った気分の本を独断でご紹介いたします。

博士の愛した数式 ~疑似家族にあふれる静かな愛に涙~

小川洋子博士の愛した数式」は静謐な人間愛に涙します


寺尾聡さん、深津絵里さん主演で映画化もされました。

あらすじ

主人公の博士は80分しか記憶が持たない前向性健忘’という病気に侵されていますが、
その特殊性とは別に、淡々と静かにシングルマザーである私とその息子『ルート』との
疑似家族にも似た愛情に満ち溢れた日々が描かれていきます。

高校生の時に大学生の相手との子供を妊娠して束縛する母から逃亡するように家出し、
シングルマザーとなった私は、家政婦紹介所で他の家政婦が長続きしない、
問題ありの数学の教授の家を紹介されます。

博士は事故により80分しか記憶が持てないという障害を抱えていますが、
事故前の記憶は存在しているため、こよなく数字を愛していた人格は残っています。

ある日、私が小学生の息子を家に残していることを知った博士は
明日から息子も一緒に連れてくるようにと伝えます。
子供は一人にしてはいけないという、博士の子供に対する愛情の表われでした。

次の日、博士の家に一緒に赴いた息子に博士は「ルート」という呼び名を付けます。
頭の形が数学記号の√に似ているからです。

その日から会うたびに初対面の挨拶をする三人ですが、父親のいない私親子と
博士との本物の家族とは少し違うけれど、静謐な愛があふれる交流が始まります。

博士は数字に対して特別な執着があり、その思考を中断されることはとても嫌がりますが、
ルートだけは別で、ルートに数学を教えたり、博士の大好きな野球の話をしたりして
温かな日々が過ぎていきます。そしてそれは博士の亡くなる日まで続くのでした。

読後感想

交流の中に様々な数式や数字の仕組みなどが語られていて、
作家ってすごいな~と変な感心を思わずしてしまいます(笑)

博士にも私にもいろいろな問題は起こりますが、特別大事件があるというわけでなく
静かな日常が私の視点て淡々と綴られていく愛情あふれる物語です。

父親のいないルートが、博士の中に父親像を見て(実際は祖父くらいなんですが)
博士に大きな愛を与えられて育ち、博士が亡くなるころに数学教師になるところなど
胸を打つ感動があります。

博士と私には男女の愛などは全くなく(博士は義姉を愛していました)
純粋に人間愛が描かれた物語ですが、
こういった愛情もあるんだなあ、と深い感慨を受けました。

読み終わった後に、思わずほわ~っと温かい気持ちになれる
そんな優しさにあふれた物語です。

博士が話す数式も勉強になりますよ(?)

例えば私と博士は友愛数で結ばれていると博士は言うのですが、
それはどういうことかというと
私の誕生日2月20日「220」と
博士の大切な時計の裏に刻まれた番号「284」は
220の約数が{1.2.4.5.10.11.20.22.44.55.110}で合計すると284
284の約数が{1.2.4.71.142}で合計すると220
となるから友愛数だと説明します。

日常生活に数学を持ち込まない私(不二ちゃんです)などは
それを生活の一部にして私(主人公)親子とのコミュニケーションの
手段とすることにも今までにない小説だと興味深かったです。

ちょっと変わった素敵な物語です。