本のガイドブログ~貴方の気分に添える本をご紹介~

年間数百冊×年齢(アラフィフ・・・)を読破してきた不二ちゃんことワタクシが楽しい気分、泣きたい気分、感動したい気分、家族愛な気分などそれぞれに合った気分の本を独断でご紹介いたします。

うらぼんえ~死してなお孫を想う祖父の愛に号泣~

浅田次郎「うらぼんえ」

高倉健さん主演の映画の原作本である
鉄道員」の中に収められいる短編小説。

気風の良い江戸っ子のおじいちゃんの愛に涙が止まらなくなります。

あらすじ

ちえ子は幼少期に両親が離婚し、どちらも引き取りを拒否したため、
祖父母の養女となります。

とても愛情深く育てられましたが、祖母はちえ子が高校生の時に、
祖父は大学生の時に亡くなり、実の両親とも親交がないため天涯孤独となりました。

しばらくのち、ちえ子は邦男という男と結婚し、
一緒に旧家を誇る邦男の実家が盛大に行う初盆、盂蘭盆会(うらぼんえ)に
参加するために新幹線で邦男の実家に向かいます。

親戚一同が盛大に集まる盂蘭盆会に
身寄りが一人もいないちえ子は肩身の狭い思いで心細くいます。

追い打ちをかけるように、
子供のできないちえ子を邦男と離婚させようと
ひそかに話されていることを
この家に反発する姉嫁が教えてくれます。

ちえ子は熱烈に邦男を愛しているわけではありませんが、
孤独なちえ子にとって唯一の家族なので大切に思っています。

そんな中、盂蘭盆会が始まり、迎え火がたかれた門に
親戚一同が集まっていると
ちえ子が驚愕することが起こります。
なんとあり得ないことに亡くなった祖父が現れたのです。


孫を溺愛する祖父が、はした金でちえ子を追い出そうとしていることに
激怒して現れたのです。

「ちえ子を寄ってたかって、いじめていただいたそうで」

言い放った祖父は
「じいちゃんに任せな」とちえ子に言い
親戚が話し合う部屋へと入っていきます。

祖父の曲がったことが大嫌いな気性を知っているちえ子は
けんかしてしまうのでは、と気が気でありません。

一晩中話し合った後戻ってきた祖父はちえ子に
「すまねえ、ちえ子。じいちゃんな力になれなくって」
と謝ります。

結局、離婚話を覆すことは出来なかったのです。

兄嫁に聞いた話では、あの気性の激しい祖父が
ただひたすら頭を畳に擦り付けて
「ちえ子を追い出さねえでくれ」と頭を下げてくれたとのこと。

姉嫁に誘われ、精霊流しを見に行ったちえ子は
自分のために下げたくもない頭を下げた祖父を想い
「じいちゃんはやっぱり最高だ」と送り火を見送るのでした。


読後感想

孫娘が心配で、霊になってまでして出てきた祖父の愛。
味方が誰もいないちえ子にとって
じいちゃんが来てくれたことはどんなに心強かったことか。

もうじいちゃんの登場シーンは
泣けて泣けて頭が痛くなるほどでした(笑)

この世では天涯孤独になってしまったけど、
じいちゃんに見守られていることがわかって
ちえ子も幸せだったのではないでしょうか?

ぜひ、邦男のような優柔不断男じゃなくて
じいちゃんのような素敵な男を見つけてね、ちえ子さん!

ぜっっっったいに外で読まないでください!!号泣レベルに泣けます!!!

壬生義士伝~家族のために分を全うした男の生きざまに号泣~

浅田次郎壬生義士伝

第十三回柴田錬三郎賞受賞作品。

中井貴一さん主演で映画化もされました。

この物語に出てくる男たちは、主人公の言葉を借りると、
それぞれの分を全うしておりとにかく格好いい!

今までで一番泣けた作品です。


あらすじ

慶応四年、大阪にある盛岡南部藩蔵屋敷鳥羽伏見の戦いで敗れた
新選組の男が満身創痍で現れます。

男の名は吉村貫一郎

かつて南部藩を脱藩した男で主家への帰参を願い出ます。

おりしも蔵屋敷にいたのは吉村のかつての組頭であった大野次郎左衛門。
大野は屋敷を招き入れるが、切腹を命じる。

部屋に入り切腹までの時間、吉村はなぜ脱藩したのかを思い返すのでした。

かつて藩では先生と呼ばれた男でしたが、
とにかく銭がなくその日の飯も食べれないほどでした。

ある日、妻が食い扶持を減らそうと入水自殺を図ろうとしたことから
吉村は脱藩を決意し、新選組に身を投じます。

剣の腕前はぴか一ですが、とにかく銭に汚い吉村という男。

斎藤一はそんな吉村を軽蔑はしますが、
なぜか彼を嫌うものは一人もいなかったのでした・・・。


読後感想


脱藩した後、切腹になるのが分かりながらなぜ戻ってきたのか。
切腹を命じる大野次郎左衛門の想いにも泣かされます。

本当に出てくる登場人物全てが心の中に一本の筋が通っており格好いい。

人間の真の強さに慟哭せずにはいられない作品です。

もうどこをとっても泣ける作品

浅田次郎さんおそるべし!!です。

私のつたない文章力では語りつくせない感動があるので
ぜひ手に取ってお読みくださませ。

自分ではどうしようもない運命に抗いながらも
ここまで分を全うできるのはやっぱり人間の素晴らしいところだと
こんなにも素晴らしい強い男もいるのだと、
号泣できること間違いなしです。

泣きすぎて目が腫れてしまうので、次の日に予定がない日にお読みください。

魚住くんシリーズ・メッセージ~余りにも切ない少女の運命に涙~

榎田ユウリ「魚住くんシリーズ・メッセージ」

榎田ユウリさんの魚住くんシリーズ全5巻のうちの第3巻「メッセージ」

題名のメッセージの意味が分かるとき思わず号泣してしまいます。

榎田ユウリさんはBL作家さんで、この魚住くんシリーズ
BLの部類に入りますが、それだけでない深い人間愛を感じさせてくれる物語です。


あらすじ


大学院生の魚住くんは、小さいころに家族を亡くし、
里親に何度か出されますが、そのたびに暴力や虐待をされ、
やっと幸せな家に引き取られたと思ったら、
その家族が交通事故で死んでしまうなどという不幸な生い立ちと、
男女を問わず惹きつけるその美貌が引き起こす過去の事件などから
味覚障害や人とのコミュニケーションが取れない残念な男。

それでも大学時代の友人・久留米と
その元彼女・マリ(魚住の家族を交通事故で奪った加害者の娘)、
隣の部屋に住むインド人・サリームたちと触れ合うことにより
少しずつ人間らしさを取り戻していきます。

そんな魚住くんが知り合いの先生に頼まれ、病院のクリスマス会を手伝ったとき、
さちという少女と知り合います。

さちはなんと義父に暴行を受けたことにより、エイズに感染してしまったという
不幸な中学生。
学校でもそれを理由にいじめられています。

魚住とさちは似た境遇から心を通わしていきます。

魚住が自分から心を開くなんてとても珍しい事。

さちも自分が作ったお菓子を気持ち悪がることなく(エイズなので)
なんのてらいもなく食べてくれる魚住に心を開きます。

そして魚住は久留米とさちと三人でさちの夢だった遊園地へ遊びに行きます。

とても幸せな時。

しかしそれは長く続きませんでした。

なんとある日、魚住の目の前で
さちはダンプカーにひかれて死んでしまうのです。

今まで何回も理不尽な目にあい、心を閉ざしてしまっていた魚住が
ようやく人間らしさが出てきた矢先の突然の再びの理不尽な出来事。

再び、周りをシャットダウンしてしまい自殺未遂を起こしますが、
久留米、マリ、サリームによって少しではありますが
前を向くようになっていきます。

そんな魚住のもとにカードが。

それはさちが遊園地から魚住に送ったメッセージカード

そこに書かれていたこととは・・・。


読後感想


さちが死んだ後に届くメッセージに思わず号泣してしまいます。

エイズで命の期限が決まっていたため、
死んでしまうとは思いましたが、まさかこんな突然の死が来るとは。

魚住くんシリーズは魚住くんの人間としての成長とともに
鈍感な久留米とのゆっくりとした恋もあります。

とにかく登場人物がみんな魅力的。
久留米は超鈍感だけどまっすぐで大きな男だし
マリは魚住の母親のようなとても格好いい女性です。
サリームもとても優しく温かい。

そんな登場人物ばかりの話の中でこの3巻はとても辛い痛い話です。

BLは苦手という方も全5巻を読んでいくといつの間にか
魚住と久留米の恋を応援したくなりますよ。

ジェノサイド~ハリウッド映画のようなスケール間にページをめくる手が止まらない~

高野和明「ジェノサイド」


2012年このミステリーがすごい!1位作品。
惜しくも受賞は逃しましたが、第145回直木賞の候補にも挙がりました。

途中、目を背けてしまいたくなるほどの虐殺場面などもありますが、
どういう結末になるか読む手が止まらなくなります。


あらすじ


ジョナサンイエーガーは元グリーンバレーで
今はイラク民間軍事会社に勤める傭兵。

イエーガーには余命一か月と宣告された息子がいて
その息子を治すためには大金が必要です。

そんなイエーガーの弱みに付け込むかのように
ある危険な任務が舞い込みます。

息子の病気が治せるほどの破格の報酬。
背に腹は代えられないイエーガーは承諾します。

任務の内容は第一次アフリカ大戦が行われている
南アフリカ共和国に潜入し、
危険な病に取りつかれたとされるピグミー族を駆除し、
「これまで見たこともない生物」に遭遇したときは
その生物を排除するというものでした。

これこそ人類滅亡を救うためにアメリカ合衆国大統領が発動した
「ネメシス作戦」でした。

一方遠い日本では、普通の大学生・古賀研人が
父の葬儀の時に参列者の新聞記者・菅井から
「ハイズマン・レポート」という耳慣れない話を聞かされていました。

葬儀後、亡くなった父から研人のもとに電子メールが届きます。
死を予見したかのような記述がなされたメールに凍り付く研人。

研人は父の書斎にあった本に挟まった
1枚のキャッシュカードと1枚のメモを発見します。

内容は
本とメモは処分しろ
黒いノートパソコンを保管し誰にも渡さないこと
500万円入ったキャッシュカード
町田市にあるアパートの住所と鍵
全てのメールや電話は盗聴されているから用心しろという警告。

不審ながらも町田のアパートを訪ねると
さながら小さな研究室のような部屋に驚きを隠せない研人。

「自分の研究を引き継いでGPCRの作動薬を創薬しろ。
危険なら投げ出しても構わない。期日は2月28日」

残された謎のメーッセージとパソコンに入ったGIFTという
極めて高度な創薬ソフト。

研人は韓国人留学生・李正勲とともにソフトを解読していきます。

やがて警察の手が及び危機一髪逃げ出した研人は
日本政府をも巻き込んだ重大な事件に自分がまきこまれたことを痛感します。


読後感想


遠いアフリカの僻地と日本。

物語は遠い二人の主人公の話が同時進行で進められていき
一見何も関係ないように見えますが
二人の主人公はやがて驚愕の事実を知ることになるのです。


読んでいる間ずっとドキドキしていました。

本当にハリウッド映画のようなスケール感

途中、気分が悪くなるような虐殺シーンもありますが
読むのを止められなくなります。

アキリという物語のカギを握る
「これまで見たこともない生物」が出て来た時が
マックス気持ち悪い(笑)

SFのようでありながら、実際にあり得ると考えさせられる
鳥肌が立つような怖さもあります。

ある意味ホラーより怖い話

勇気のある方は是非手に取ってくださいませ。